珍しくアドリアンから娘ちゃんの所へテキストが届いた。
「今度の土曜日、お父さんのおうちでパーティするので、もしうるさかったら連絡してー」
アドリアンは私たちの大家さんの息子さんだ。
娘ちゃんたちと年が近かったので、小さい頃はよく一緒に遊んでいた。
ちょうど上の娘と下の娘の間の年だ。
その頃は、同年齢の子供たちは、庭伝いにあちこちの家へ出没しては、どこかで何かを食べて笑、5-6名でいつも遊んでいた。多分、私の所の下の娘ちゃんがその集団?では一番年下だったと思う。
私が小さい頃の日本のような雰囲気だ。ともかく学校から帰ったら、庭伝いに友達を見つけてはウロウロしてた。アドリアンもちょくちょく私のアパートにお菓子を漁りに来ていた笑。
大家さんは私たちのアパートの裏、同じ敷地だけれどちょっと奥まった所に一軒家を建てて住んでいた。娘ちゃん達が小学校高学年くらいまで、裏に住んでいた。その頃二人目の赤ちゃんが産まれ、アドリアンも一緒に少し大きなおうちへ引っ越してしまったので、それからはあまりコンタクトすることが無くなっていた。
その後その大家さんが住んでいた裏のおうちは人に貸し、何度か違う人が借りていた。
一番仲が良かったのは、50代くらいのドイツ人のご夫妻で、品が良くて、奥様はいつもニコニコしてとても感じの良い人達だった。その頃は彼らがバカンスに行く時は、お庭の植木にお水あげを請け負ったりして、よく行き来をしていた。
一番ひどかったのは一番最後の住人、2年くらい前だ。ブラジル人の大家族が住んでいた時だった。大家さんのおうちは、一軒家とはいえ、それ程広くなく、ご夫婦ならちょうどゆったり住めるくらい。子供一人でも上の階に2部屋あるので、まあ大丈夫かな、くらいの広さだ。
でも、彼らは何人住んでる?と思う程、ゾロゾロ出てきて、子供だけでも3人と赤ちゃん一人くらいいたような・・・本当に住んでいなかったのかもしれないが、ともかくいつも常にすごい数の人がいた。その上、ゴミは出すわ、犬はうるさいわ、で普段おとなしい近所の住人からも珍しく苦情が来ていた。
彼らのいる時に玄関のカギが壊された。このアパートに20年以上住んでいるけれど、この静かな住宅街で今までそんな事は起こったことが無かった。それに、なぜか最初に鍵が壊れているのを発見したのが私たちだったので、ともかく鍵屋さんに行って、修理をしてもらい、他の住人の分も鍵を作ってあげて配った。犯人はわからないけれど、彼らの仲間ではないか?と疑っている自分がいた。
それはともかく。
このブラジル人の大家族はおうちと(大家さんが丹精込めて作った)お庭をめちゃくちゃにして、汚すだけ汚して、ゴミ屋敷にして、夜逃げのごとく、去っていった。
大家さんもちょっとこれに懲りたのか、子供さん達も大きくなって手が離れたのか、そのブラジル人が出て行った後、プロの業者さんを入れて大掃除をし、もう一度リノベをして自分で住むために戻ってきていた。
20年ぶりの大家さんはすっかり髪が真っ白になっていたが、上背のあるがっちりした体格でダンディな雰囲気はそのままだった。
「久しぶりー、ご家族の皆さんはお元気?」
「いや、実は離婚してね・・・」
ひえー、仲良さそうだったのに!まあ、ベルギーの離婚率は高いからね。
「えー、そうなんですねー。アドリアンも、もうお仕事かな?」
「元気にしているよ、大学はドイツの大学にいって、エンジニアになって就職はベルギーで。今は会社の近くの田舎街に住んでるよ。」
みたいな話をしたのが去年くらいかな。
アドリアンはその後、時々パパのおうちに遊びに来ていたみたいなんだけれど、きっとパパのおうちだと、誰もいないし、ちょうどいい、週末どんちゃん騒ぎをやろう、って思ったんだろう。
それも娘ちゃんにテキストを送ってくるなんて、なかなか賢いな。
娘ちゃん達はもう家を出ているので、ここにはいないし。
それに、事前に言われたら「うるさい!」って言いにくい。うまいな。
という事で、今週末はどうもうるさくなりそうだ・・・・