この前、主人がユーチューブで、黒澤明監督の「七人の侍」を見ていた。
この映画はめちゃ古い映画にもかかわらず、今でもその心情が理解できる人間の本質について描かれており、アメリカでもリメイクされたほど、今でも面白い映画だ。
黒澤作品はこれだけでなく、いろんなものがリメイクされていて、海外の賞もたくさん取っている。
今になってもこうやってユーチューブで上がってくるぐらい、みんなの心を揺さぶる映画だ。
それを見ながらふと思ったんだけれど、ベルギーに来てから逆に日本文化に触れるようになった気がする。
だって、日本にいた頃はまず見た事のなかった(ゴメン!)黒澤明の作品とか、小津安二郎の作品とか、はベルギーに来てからほぼ、全部見た。すごくない?笑
これを全部見たのはたぶん20年くらい前。ちょうどビデオが全盛期で、あちこちにレンタルビデオのショップがあった頃だ。
大体、日本で見たことがない、っていう理由にもちろん、興味がなかった、という事もあるけれど、そんな古い映画の類がどこにもおいてなかったし、あまり上映されてなかった。目に入るところになかったっていう点も大きいと思う。まあ、あったとしても見てなかったか・・笑。
それに日本にいた時は新しい映画の方が新鮮で、あのころはファンタジー系、未知との遭遇やET、エイリアン、アクション系でトップガン、ミッション・インポッシブル、ダイハード、ともかく目白押しに楽しい映画があったので、わざわざ古いのを見ようという気もなかった。
それでこんなベルギーという日本から遠く離れた国のレンタルビデオショップにも、黒澤明とか小津安二郎の作品がズラッと置かれている。これは驚きではないか?!!
借りる人いるのか?って思っていたけれど、そこそこ人気で、よく貸し出し中になっていた。
もちろん古い作品なので、吹替まではやっていなくて日本語の音声で字幕が仏語。当時日本語に飢えていた私たちにとっては、日本語なら何でもいいやーってくらいの気持ちだった(笑)
それで、そのレンタルビデオショップでともかく片っ端から日本語のヤツを借りてみていた。笑。
そうやって見ていると、やっぱり黒澤明っていうのは偉大な監督だと思う。
あんなに古い映画なのに、今見てもまだ面白いし、感情が伝わってくる。
そんな当時のセリフが今でも生きている。
羅生門も素晴らしい作品で、大好きだ。7人の侍は当然名作。数回繰り返してみた。
隠し砦の3悪人とかいう作品もあった。これも面白かった。
赤ひげ、影武者、用心棒とか椿三十郎など軽くて楽しい。
ともかく、その頃は何度も何度もみた。
小津安二郎の時代でも女性がたくましい。
何もない日常。これが何となく引き込まれてしまう。
慎ましやかなんだけれど、堂々としていて、言いたい事をサクっと言ってのける。
どの映画を見ていても、日本人って人情があって、おせっかいで、親切で、恩着せがましくなくって、人を笑わせるのが好きで、いやな部分でも、あーあるある、って思う。
今の日本人も回りばかり気にせず、これくらいサクっと言いたいことを言えばよいのに、って思う笑。昔の人の方がモダンだったのかもしれない、って思ったり。
小津作品だと、お茶漬けの味、東京物語、お早う、浮草、秋刀魚の味、とかそんなのを見た記憶がある。もうかなり忘れてしまったけれど・・・
そんなレンタルビデオショップも時代の流れで閉店に追いやられ、今やビデオデッキですらおうちにおいている人もいないのではないか。あれからCD になり、DVDになり、もうDVDですらなくなり、ネットフィリックスみたいな動画配信サービスでアクセスするようになった。
最近、またユーチューブとかで上がってきたりして、懐かしい思いで見ている
しかし、なぜこんな日本の古い映画がこの欧州の端っこで上映されているのか。
思うに、欧州の人達は日本の映画だけではなく、世界中にある古いものを大切にしているように思う。時々チャップリンの無声映画が上映されていたりするし、フランスの古い映画も好きな人は好きみたいだ。そういう文化的なものに対する情熱が深い気がする。
そんな世界中の古いものの中でも日本のものって言うのは独特の文化的な香りがあって、品があってユーモアがあって、本質を突いていて、みんなを魅了するのがわかる気がする。
身内びいきかもしれないけれど…笑。
本当に、日本にいたときは全然見たことがなかった。
こんなところでこんなにハマるとは、思ってもみなかった。
それに、見てみるとその良さがめちゃわかる!!
冬の長いベルギー。
あったかいお部屋で古い映画をみてほっこりするには、いい季節だ。
七人の侍を見ながら、そんな日本の文化を大切にしたいな、って思った。